【読書感想】竜のグリオールに絵を描いた男

【読書感想】竜のグリオールに絵を描いた男

今回の本

タイトル:竜のグリオールに絵を描いた男

著者:ルーシャス・シェパード

竜のグリオールに絵を描いた男 (竹書房文庫)

表紙・タイトルに凄く惹かれて。中・小編の4編からなる作品です。

あらすじと登場人物

あらすじ

巨大な竜グリオール、過去に魔法使いにより動きを止められたこの竜は、そのまま死ぬことなくその場で大きくなり続けた。その背には町があり、森があり、川があった。

しかし、この竜は人の行動に影響を与える強い思念を持っており、周囲の人間はその思念から逃げられる事はできない。

この物語は、そんなグリオールの影響を受けた人々の物語。

竜のグリオールに絵を描いた男

グリオールを殺す方法があると、懸賞金をかける町に話をもってきたのは画家だった。悪意でもってグリオールを殺そうとするとグリオールに気づかれてしまう。そのため画家は、塗料に毒を含ませ、体に絵を書いていくという。絵の具は少しずつ浸透し、殺すまでには何十年はかかるという壮大な計画だが、必ず殺せると画家は言う。人生をかけた画家とグリオールの戦いが始まる。

鱗狩人の美しき娘

グリオールの背の町で生まれ、グリオールに直接肌を触れながら育った美しい鱗狩人の娘。彼女は痴情のもつれからならず者から逃げることとなり、グリオールの口内へ入る事を余儀なくされる。

彼女が口内で出会ったのはグリオールを神と崇める老人と、近親相姦の果てに広がった知能の低い一つの部族だった。グリオールの内部に巣食う寄生虫を退治する事でグリオールとの共生関係を結ぶ彼らに捉えられた娘は、グリオールから脱出する事を計画するが…

始祖の石

殺人事件が起こった。被害者はグリオールを信奉する宗教の権力者。犯人はその宗教にのめり込んだ娘がいる宝石職人。凶器はグリオールの分泌物から生成されたとされる石。宝石職人はグリオールの意志に操られた結果だと無罪を訴える。

センセーショナルな事件を扱って名声を得ようとする弁護士は、宝石職人の弁護の為の証拠集めに奔走するが、父の有罪を希望する宝石職人の娘にのめり込んでしまい…

噓つきの館

ある粗野な男が、グリオールの背に降り立った竜を見ようと近づいてみると、そこには竜が変身したらしい美しい女がいた。宿に連れ込み一緒に暮らすうち、会話も行動も不可思議な竜の女にどんどん惹かれていく男だったが、女はある一つの目的を隠していた…

登場キャラクター

グリオール

圧倒的な存在感を放つ竜。はるか昔に魔法使いに体を麻痺させられた為、その場からは動けなくなっているが、どんどん成長していった。あまりにも大きく、背には町があり、その分泌液は川となる。そのとてつもなく強い思念により、近くの人間や動物はその影響を免れる事はできない。

 

感想

とにかくグリオールという存在感がすごい。物語のどのページにもグリオールの影響があるんじゃないかというぐらい、見えなくても、その場にいなくても、グリオールを感じられる怖さ。

そしてその「グリオールの思念の影響」というのがとんでもなく厄介な代物であり、この作品のキーワード。各話の登場人物達もその影響の存在を知っているという事もあって、自分達が行っている事はグリオールの影響なんじゃないかと疑心暗鬼になる事もしばしば。すると読んでいるこちらも、この登場人物はグリオールの影響でこういう行動をしているのか、はたまた彼ら自身の悪意の結果なのか。と、考え出すとすべてが複雑で不可思議。すべてがグリオールの思惑どおりに。

また、読み終わって色々思い返した時に、もしこのグリオールの影響というのが実は虚像で皆の思い込みだったとしたら・・・と考えて怖すぎる結論だったのですぐ考えるのをやめる。影響という事にしておくのが一番幸せなんです。

とにかくどの物語も終わった後に背筋が凍るというかやはり人間はグリオールからは逃げられないのだ・・・という感じになって凄まじい。そして最後の1文に叩きのめされたりする。ファンタジー小説としてものすごく面白かった。ただ、ファンタジーを普段よまない人にはちょっと読み辛い部分はあるかも。だけどファンタジー好きならばぜひ読んで欲しい。というか設定だけで絶対刺さるとは思うんですけどね。

どれも好きでしたが一番好きな話は鱗狩人の美しき娘。これでもかというぐらいに主人公の女性に襲いかかる不幸の連鎖。ちょっとした悪事が、全部未来に帰ってくる絶望感。グリオールによる悪意の増幅という感じでグリオールの牢獄から逃げれそうにない感じがすごかった。

グリオールの外も内も色彩描写が豊かで、鮮やかな情景(グロい意味も含めて)を色々見せてくれるので、グリオールの姿を想像するのが楽しかったです。表紙絵も素敵だけど。

おわりに

作者による各話解説がまた面白くて。すごい人生歩んでいるなこの人と思ったらその後の作品解説でジョークだったりホラ話が好きな人って書いててなおさら面白かった。

ただ本当に残念なのが、作者がなくなっている事。まだ未邦訳の話がいくつかあるのでそちらの刊行をとりあえず待ちたいとは思いますが、この無限に膨らますことができそうなグリオールの話がもう読めないのは残念です。

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