【読書感想】帰還―ゲド戦記

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ゲド戦記シリーズ

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タイトル:帰還 ゲド戦記4

著者:アーシュラ・K. ル=グウィン

帰還 ゲド戦記 (岩波少年文庫)

あらすじと登場人物

あらすじ

ゴント島で静かに暮すゴハ。彼女は世界に平和をもたらしたエレス・アクベの腕輪をゲドと共に発見したテナーその人だったが、華々しい生活を望まず、農家と結婚し、子どもたちは成長して家を出て、夫に先立たれた身。

そんな彼女と暮らすのはテヌーという半身に重度の火傷を負った女の子。親やその仲間に虐待され、見捨てられた身だったが、テヌーが引き取り、娘として育てている。

そんな中、テナーの親代わりだったオジオンが危篤との連絡が入り、二人はオジオンの元へ急ぐ。オジオンは最後に、何もかもが終わったとつぶやき永遠の眠りにつく。それは世界の果てで大賢人ゲドがその全ての力と引き換えに世界を救った時であり、世界に新たな王が誕生した瞬間だった。

世界はより良くなっていく。そう人々が噂する中、テナーの元に竜にのったゲドが運ばれてくる…

登場人物

テナー(ゴハ)

ゴハと呼ばれるゴントの農家の寡婦。その正体は墓所の大巫女として名もなき神に仕えていたが、ゲドと共にエレス・アクベの腕輪をアースシーに取り戻した腕輪のテナー。カルカド帝国出身で白い肌。オジオンの手ほどきで魔法の基礎を覚えたが、普通の生活を求め農家の嫁となった。

二人の子供は独立して今はテルーと暮らしている。

テルー

テナーの元で暮らす半身に重度の火傷を負った少女。親とその仲間に虐待・強姦されており、テナーが引き取った時は死にかけていた。火傷はケロイド状になっている所もある。

テナーの愛によってじょじょに人間らしさを取り戻している。

ゲド(ハイタカ、タカ)

ロークの大賢人だった老人。世界を救うために自身の持つ全ての魔法の力を使ったので、今はただの人。元はゴントで山羊飼いをしていた。竜と対等に語る者=竜王でもある。

感想

まずこの本は児童書ではないです。前までの3巻はアースシーというファンタジー世界の冒険物語でしたが、この本は前巻が発売されてから16年。作者も読者も大人になったり更に年を積み重ね、現実の社会情勢も変わり行く中で作者が言いたい事、言いたかった事をテナーの目線で問いかけてきているように思います。

物語は淡々とした田舎の日常という形で進んでいくものの、一人の女が暮らしていく中で日常的に感じる差別や隔て。男女の地位の差や障害・外見に対する偏見。それらに対する無力感、無常観。と、どれもが現実世界でもありうる、いたるところにある問題。読んでいて悲しさだったり哀しさだったり色々な感情が溢れてくる。単純な善悪二元論ではないけども、話の中で出てくるいわゆる「邪悪な物事」というのがどれも胸糞悪い。こんなにファンタジーではなくて現実に寄せる必要があったんだろうかとも思うほど。読んでて辛いところも。

テナー・テルーと同様に、魔法を失った事で心を閉ざそうとしたゲドの気持ちも痛いほどよくわかる。初めは「魔法を失ったぐらいで」と軽く思っていたけども、彼の15歳からの人生すべて、そして彼の人格を形成していたすべて、彼の功績や彼の地位やプライドやそれらをすべてを失ったことと思うと、ゲドの喪失感はとてつもなく大きいわけで。生きる理由なくして自死する未来も勿論ありえたんだろなぁとも思う。それでも彼が竜にのってやってきたのはゴントのテナーの下。若い頃にハヤブサとなっていたゲドがそうであったようにオジオンの下に帰ってきたとも、ただただ故郷に帰りたかったとも色々読み取れるけど、そこはやっぱり頭のどこかにテナーがいたんじゃないかなぁと思います。

おわりに

原題はTehanu, The Last Book of Earthsea。テハヌーというタイトルなんですね。タイトルも今までの付け方と違うし(その後とも違う)、やっぱり何か特別な巻という感じがする。

賛否両論ある巻ですが、私は何度も読みたい、読み込みたい本だと思っています。章が終わる毎に考えさせられる事が多すぎて、一日二章が限界でした。

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