【読書感想】賢者の怖れ 2 (キングキラー・クロニクル 第2部)

【読書感想】賢者の怖れ 2 (キングキラー・クロニクル 第2部)

キングキラー・クロニクルシリーズ

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今回の本

キングキラー・クロニクル第二部の第二巻。引き続き伝説の秘術士クォートの学生生活が語られる。

あらすじと登場人物

あらすじ

愛しのデナが、憎きアンブローズに付きまとわれており、修理してやると強引に預けた指輪を返却してくれないと知ったクォートは、デナの指輪を取り戻すため、アンブローズの部屋に侵入し、指輪を奪い返す計画を練る。しかしその行動の結果、クォートはとても大きな代償を払うことになる。

死の危険が迫る代償に対して、クォートと仲間たちが取った行動とは…

登場人物

クォート

赤毛の伝説の秘術士。この物語では彼の秘術校の学生時代が語られている。

常に金欠は相変わらず。着ている服もトラブル毎に駄目にしているので、もうすぐ裸になってしまいそう。スリルを楽しんで自分から危険に向かっている節がある。感情によって目の色が変わる。

デナ

クォートの想い人。一つの所に滞在せず各地を放浪しており、数々の男性から想いを寄せられている。歌は上手いが楽器は初心者。良かれと思ってした行動が最悪の事態になることが多々あるらしい。

アンブローズ

裕福で権力も持つ男爵家の息子。クォートと対立している。荒っぽい魅力がある人(魅力より荒っぽさが勝るけど)とはデナの評。しかし関わった人のほとんどから嫌われている模様。

感想

今回はクォートの学友であるシモンとウィレムの巻という感じ。彼らとの友情が伝わってきてちょっとした羨ましさがあった。カバーイラストにも二人というかクォートとデナ(とチャンドリアン)以外の人物が初登場。二人のイメージは割とそのままだった気がする。二人に比べるとクォートがなんかすごい優男になっててちょっと笑う。今までのカバーは緊迫した場面で感情が昂ぶっているシーンばっかりだったからなぁ。

二人の友人の話を戻すと、クォートが相変わらずコチラに魅力が伝わりきれていないデナ嬢に下手に首を突っ込んで危ない橋を渡っているなぁと思っていたらちゃんとウィレムに突っ込まれてた。こういう事をちゃんと言ってくれる友人ってのは素晴らしいよなぁと素直に思ったり。ウィレムもシモンもクォートには過ぎた友人だよ…とは言い過ぎか。彼らも彼らで結構問題ある人物だったもんな。ようするに類は友を呼ぶ感じか。でも3人の馬鹿騒ぎと悪質な冗談の言い合いは読んでいてい気持ちがいい。

今回、今までずっと警告されてきた共感術と血の問題が浮上。「悪意」を受けてそれに立ち向かうクォートの対抗シーンはまさに目に見えるような緊迫した描写で息を呑む。共感術が何をどうやったらこうなるというのが全部説明できる力なので、描写がすごくわかりやすい上にそれをクォートがすごいスピードで相手とやりあっているのがわかる面白さ。

そして共感術だけでなく命名術の秘密もちょっとずつ小出しされていて、世界の秘密に近づいているのがわかるのもまた良し。この学生生活で命名術が語られるのはいつになるやら。いやまさか学生生活の後なのか。クォートが学校を不名誉な去り方をしたという事だけがわかっているから、今回のクォートの行動は全部ハラハラドキドキで大変だった。

今回の最高だったシーン

クォートに命を助けられた事があるフェラが、古代の詩を説明するために何気なく即興詩を吟じたシモンを見たシーンがもう最高で最高で。

フェラはまるでそこにシモンがすわっているのを見て驚いたように、首をめぐらせてシモンを見た。

いや、むしろそれまでシモンは彼女のそばに、まるで家具のように存在しただけだった。だがこのとき、フェラはシモンを見て、彼の全てに気づいたのだ。砂色の髪、あごの線、シャツに隠れた両肩の幅。このときフェラは本当に彼を見ていた。

言っておきたい。文書館で過ごしたひどい、苛立たしい時間も、ただこの瞬間を見届けるだけで十分価値あるものだった。彼女が彼に恋をするのを目にするためなら、血を流して、死を恐れる価値はあった。ごくわずかな恋。恋のはじまりのかすかな息吹に過ぎなかったし、あまりにかすかで、本人も気がつかなかっただろう。稲妻が走って雷がとどろくような劇的なものではなかった。むしろ火打ち石が内金にぶつかったとき、火花があまりに早く消えて目に留まらないのに似ている。だがそれでも、そこにはあるし、見えなくても火はおきている。

簡素なんだけど、美しい文章。読んでてこちらもクォートと同じ気持ちに。このシーンを見届けるだけで十分価値ある巻だったよ本当。この二人の今後の展開も楽しみ。クォートがなんでもできる天才肌ゆえ、他のキャラクター達の魅力はそこまで伝わってこないよなぁと思ってたらこの巻。学友達の魅力たっぷりの巻でした。

おわりに

いやもうすごい。毎巻毎巻、前巻を上回る面白さで今回も読み終えた瞬間幸せのため息。クリフハンガーな終わり方も好きだけど、こういう終わり方も好き。なんか幸せな気分のまま来月を待てる。

しかし前巻の感想でクォートがラノベ主人公みたいにハーレムルートに入ってると書いたら、今回見事に1つ1つ丁寧にルートをポキポキ折っていくのは流石に苦笑い。フラグ回収が早い。やはりデナルート一直線なのか…

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