今回の本
タイトル:ウィッチャーV 湖の貴婦人
著者:アンドレイ・サプコフスキ
あらすじと登場人物
あらすじ
ポータルを開き、異次元のエルフの世界に逃げこんだシリだったが、そこでも囚われの身となってしまう。
シリに対してエルフたちは彼女の血にしか興味なく、子を産めば開放すると迫る。
一方、そんなシリとイェネファーを探すゲラルドとその仲間たち。彼らはワインの国トゥサン公爵領で冬を越し、英気を養う事になったが、じょじょにこの国の雰囲気に溺れていく…
登場人物
ゲラルド
魔物退治の専門家、ウイッチャー。行方不明となったシリとイェネファーを探すため、仲間とともに旅をしている。
白狼やリヴィアのゲラルドとも呼ばれる。
シリ
古のエルフの血を引く銀髪の少女。滅びた王国シンドラの女王の孫娘だったが、国の崩壊と共に各地を流浪し、ゲラルド達にウイッチャーとしての基本を叩き込まれた。
その後魔法使いに育てられたり、盗賊団に加わるなど数奇な運命を歩んだ後、その血を目的としたエルフに捕らわれてしまう。
イェネファー
力ある女魔法使い。黒髪で緑の眼。
魔法使いとしての使命よりも、愛するゲラルド、シリの為に力を使おうとする。
感想
もう最初の章から度肝を抜かれっぱなし。前巻ではシリを助けた老人が、シリからこれまでの物語を聞く~という始まりだったので、今回もそういった感じなのだろうかと思っていたらまさかの話の聞き役は円卓の騎士ガラハッド。シリの次元を跳躍する能力は、私達の世界の物語世界もその対象という事で、こちらの思考の枠を大きく飛び越えるやり方だったので唸りました。そしてシリを湖の乙女と勘違いするガラハッド。既存の伝説・物語とのちょっとした繋がりの膨らませ方が本当に上手い。
さらにもう1つの仕掛けとして面白かったのが、ゲラルド・シリ達の時代から遙か後の時代、彼らが物語・伝説となった時代を舞台に、彼らの物語を夢見によって保管しようとしている当代の湖の貴婦人が最終的にはシリの逃亡劇を助けるというもの。湖の貴婦人のシリへの執着の意味、そしてその使命。全ての運命に意味はあるといった感じで感動しました。シリの代わりとなった少女の行方など、気になっていたちょっとしたところも「夢見」によって補完してくれるのもありがたい。登場人物が多いのでゲラルドやシリだけを追っていると中々接点がなくて登場しにくい人達が見れて満足。
そしてやはり一番興奮したのはゲーム版(後の時代)との繋がり。勿論この大長編はちゃんと完結するわけですが、至るところに残されたちょっとした謎や魅力的なキャラクター達のその後を本当にうまくまとめてゲーム版にしたんだなぁと理解していくこの過程。めちゃくちゃ楽しい。小説1巻→ゲーム版1~3→小説2~5巻と、どちらかというとゲーム版から入っていたので、この小説を読んでいても後の時代を知っている=シリの出自やキャラクターのその後はある程度わかった状態だったんですけど、その未来を知った状態だからこそ味わえる、今までの不思議がすべて1本につながっていくような感覚がとんでもなくカタルシス。カトリオナ病が起こったわけ、女医シャニの強さの原点、シリとニルフガード皇帝との繋がりとその距離感、ワイルドハントの執念、トゥサンとゲラルド・ダンデリオンの関係などなど…。ウイッチャーシリーズを味わっている順番が歪んでいるからこそ、シリの能力のようにあらゆる時空・あらゆる年代の歪みを体験しているような不思議な感覚でした。
終わりに
やはり改めて、前は一度読めなくなった小説版を最後まで読めたのは本当に嬉しい限り。シリーズ完結ありがとうございました。
Netflixでもドラマ版が動いているし、それまでにゲーム版ウイッチャーの1~3をもう一度プレイしてからドラマ版に入りたいところ。