天冥の標シリーズ
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- 【読書感想】天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART1 (この記事)
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- 【読書感想】天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART3
今回の本
タイトル:天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART1
著者:小川 一水
あらすじと登場人物
あらすじ
西暦2079年。
月の資源を求めて多くの企業・団体が月へと向かう。
その中には冥王班回復患者達の集団、プラクティスもいた。
回復患者でも保菌者となり、他人を感染してしまう彼らには、月面という新天地での監視・差別のない生活が望まれていた。
しかしそんな彼らが目にしたのは変わりのない監視・差別の目であった。
時は過ぎ、西暦2804年。
女王ミヒルを倒し、セレスの実権を女王から奪ったメニー・メニー・シープ。
カルミアンの母星へと移動するセレスの前に、竜のような姿を持つ異星人が立ちはだかる。
その圧倒的な戦力の前に、太陽系からの友軍である二惑星天体連合軍が展開し、戦端が開かれる。
脅威を退けたMMSや他の面々。
改めて、MMSの人類、二惑星天体連合軍、そしてプラクティスは、状況の整理と、苦難に立ち向かうべく1つに団結しようとする。
そして、二惑星天体連合軍のコルホーネンは、セレス・プラクティスが太陽系外に去ってからの太陽系の物語を語りだす…
登場人物
ダダーのノルルスカイン
はるか昔から存在する情報生命体。
自身を分裂し、宇宙各地に存在している。
ミスチフの脅威に立ち向かうべく、各地の知能生命体に対して手は差し伸べるものの全ては明かさない方針でこれまでやってきた。
ミスチフ/オムニフロラ
ノルルスカインと同じく情報生命体だったが、植物のつるのような生命体であるオムニフロラによって乗っ取られた。
宇宙を覆いつくさんと増殖し続けている。
感想
ついに始まった最終部。
まず始めの第一章から驚きの連続。年表では書かれていたものの、詳しく描かれていなかったプラクティス達の月への移住の第一歩。
宇宙へのエピソード0の物語。
それだけでも驚きだったけど、月面着陸して作業を行う第一陣に参加していたのがチカヤ・アイザワという事でさらにビックリ。
ただの高校生だったはずの少女が、数々の辛い想いや哀しい想いを繰り返し、強く、誰からも尊敬する立派なリーダーになっていたという事、そしてそんな彼女を最後まで支えたのは、かつて好きだった人、常に支えてくれた人ではなく、ひとりの親友だったという事に涙。
アオバからの手紙は、涙腺が完全に崩壊。
立ち止まるな、負けるなと語りかける言葉は、その後のプラクティス達の指針となり、歴史改竄さえなければ、その後の悲劇はなかったんじゃないかという内容。
チカヤは、既に後のプラクティス達に道を示していたんだなぁと。
そしてシリーズ後半の最大の謎、ついに明かされる二惑星天体連合軍の全貌と太陽系の秘密。
残った人類は…MMSとプラクティスと地球で眠る数百人のみ。
「全太陽系応答なし」の後、一部は生き残っていたものの、そこからは過酷な地獄。
よく全滅していなかったとしか言えず。
連合軍はAIでもって増殖し、プラクティス絶対殺すマンと化していたわけだけど、このシリーズにおいてはAIというだけで警戒度はすごい上がってしまうわけで…
AIのベッチー、大丈夫なんだろうけどやっぱりどこか怖い。
でもって、人類。
MMSが本当に奇跡であり、努力の結晶だったんだなぁと。
電力であるドロテアと、羊がいてノルルスカインが力を取り戻す下地があったなど、様々な幸運があったのも間違いないけど、スカウトの少年少女達がいかに優れていたことか。
失敗や過ちもたくさんあったけど、それでも生き延び、栄えるという一番の最良の選択を成しえたのだと思うと誇らしい気持ちに。
そして、山が動くという感じでついにポーカーテーブルにノルルスカインが自分のチップで参戦。
今までは人のチップで遊んでいただけだったノルルスカインが主体的に動くという事で、決戦の近さが感じられて、身が引き締まる。
おわりに
次からは総力戦。
決戦前夜という感じの巻だったけどMMSは生き残る事はできるのだろうか。
単にハッピーエンドを求めているわけではないけども、過去の全ての想いが報われて欲しいと思う。チカヤの祈りのセリフで、なおそう思う。
「キャンプCのチカヤより綿綿連なる血の絆にて結ばれたる者ども、リゾートC、セツルC、そしてまたセツルE、そしてまたハニカム、そしてまたこのセレスに至る隔たれ離されし地に、百の八倍の歳歳とどめ置かれたるわれら救い手は――」
■シリーズ一覧:天冥の標
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