今回の本

「バベル」と聞くとバベルの塔、中でもブリューゲルの絵画のようなバベルの塔を連想するわけですが、この作品に登場する「バベル」はその元ネタとも言われる物が登場します。しかしそれ以外の意味もたくさん含んでいる青春物語でした。

あらすじ

8年前、日本全土を襲ったテロにより、人々は関東地方に押し込まれ、日本は電子機器(インターネット)を使わないアナログ生活を送ることを選択した。

その時のテロでトラウマによって発作を抱える冬人は14歳。学校では虐められ、母からは過剰に心配され息が詰まる毎日だったが、ふとしたきっかけでレンガに覆われた謎の世界を知ることになる。

そこで出会ったシルトと名乗る14歳の王と対話する冬人。彼のカリスマ性や真摯な態度に惹かれ、二人は親友となっていく。いっぽう、冬人の父親吾郎も、勤めているビール会社の工場である物を見てしまった為に、大きな陰謀に巻き込まれていく・・・

感想

3.11の大地震を連想するようなテロによって関東以外住めなくなってネットもないアナログ生活を送る世界なわけですが、ネットのない生活というのは二十数年前までは当たり前の生活だったわけで、一度享楽を知った人間が不便な生活を送るのは大変だなぁと。父親吾郎の過去の繁栄を嘆く気持ちがよくわかる。

作中ではインターネットが無いので調べ物の基本は本。図書館で調べて~というのが流れだけど、読んでるこちらは直ぐにインターネットで「ジッグラト」や「ウルのスタンダード」を画像検索。作中世界と読者の世界との差が大きくて、すまんな冬人・・・と思いながら検索していました。ただ、やっぱり調べた時にかけた労力によって頭の中に残るか残らないかというのはあると思うので、子供の脳の柔らかさというのもあるだろうし本人の資質というのもあるのだろうけれども冬人の興味ある分野の記憶力は凄いなぁと。調べている時は覚えていても、このブログを書いてる今はその時調べた事の半分も思い返せないもんなぁ。脳トレしないと。

以下ネタバレ含む感想

着地点がわからない状態だったので序盤はドキドキ、後半はハラハラな展開で一気に読み終わりました。「シュメール」がキーワードなので、むかしギルガメシュ叙事詩を読んだのを思い出しつつ、知ってるワードがあったら喜んだり。

ウルのスタンダードは大英博物館に訪れた際に見た・・・はずだけど、本当にぼやっとしか覚えておらず。この本を見た後だったら絶対じっくり見たのになぁと後悔。冬人はウルのスタンダードに描かれた場面からこれは地下帝国の地上侵攻の計画書であると発想したわけだけど、そこに至るまでの論理の説明が結構飛躍している感じだったので、自分も同じ発想にたどり着くかじっくり見てみたいなぁと。

その発想のところもそうだけど、冬人の説明を(言ってることだけ切り取るとかなり荒唐無稽なのに)信じる父と記者など、こちらと同じ情報を共有しているんだろうかと不安になるぐらいに発想が飛躍していると感じた所は結構あった。物語の展開の都合なのだろうけど、もうちょっと説得力は欲しかったかも。

終わりに

終わってから表紙の絵を見るとちゃんとジッグラトと会社と二人の14歳が。ボーイミーツボーイな青春物語でもありました。