今回の本

 

紙の動物園

あらすじ

父さんはアメリカ人。母さんは父さんがカタログで選んだ香港の人だった。英語もろくに喋る事ができない母さんは、不思議な魔法を使うことができた。僕が求めるままに母さんが作った折り紙の動物達は、自由に動くことができたんだ。

 

感想

読書後に大きなため息。本の帯にあった通り激しく心を揺さぶられた。この作者にしか書けない本当に繊細な心の機微を描いていて、今まで読まなかった事を後悔。もっと早く読むべきだったと思う。

人種の違う親への葛藤、言葉の力、折り紙の魔法、母親からの手紙…どれも心にくる演出だったけど、個人的によかったと思うのは色々あるだろうとはいえ父親は母親を愛していたんだということ。すばらしい「愛」の物語だった。

 

月へ

あらすじ

弁護士のサリーはある中国人父娘の難民申請を担当する。中国で差別・迫害に遭い、アメリカに逃げてきたと話す父娘。昔から厳格に公正と正義を貫いてきたサリーは父娘の話に憤るが…

 

感想

あとがきによると中国では未訳らしい。そりゃそうだ。

ありふれたストーリー、ありふれた展開。難民申請では同じような事を話す申請者が山ほどいるわけで、それを選別するだけで大変。いちいち真に受けてたら身が持たなくなるのもわかるし、申請者は何が何でも通る為に嘘でも何でもするのもわかる。幸せになろうとする時、正義はどの位置にあるのかを考えさせられる。

 

結縄

あらすじ

ミャンマー奥地、結縄を使った文字によって部族の記録・物語を管理してきた男。その彼に都会の遺伝子研究への協力が持ちかけられる。

感想

結縄文字の存在は知っていたけど、それとDNAの塩基配列とを組み合わせるというのは面白い発想で驚いた。都会の男と田舎の男。なんとなく教訓話のようで後味の悪さが残った。

 

太平洋横断海底トンネル小史

あらすじ

昭和36年、日本とアメリカによる太平洋戦争が回避された世界。2つの国は友好と経済対策の為に太平洋横断海底トンネルを双方向から掘る事を決定する。日本側からの掘削に参加した台湾出身の男は、今両者の中間に存在する地下都市ミッドポイント・シティで暮らしている。

感想

IF世界の設定が素晴らしい。世界観の説明を読んでるだけでもなるほどとなる。日本は満州・台湾の時点で領土的野心を失っている為、台湾出身の日本人が主人公。この世界ならではの問題が現実の問題とリンクして考えさせられた。

 

心智五行

あらすじ

調査船ダンデライオン号が人類居住区域から60光年離れた場所で遭難した。唯一の生き残りであるタイラは、ある惑星に緊急着陸する。しかしそこは文明の発達が止まった未開の惑星だった…

 

感想

タイトルどおり、五行が物語のキーとなるSF。丹田などが登場して中華ファンタジーとSFの融合という感じ。読んでから、潔癖症って大変だよなと思った。

 

愛のアルゴリズム

あらすじ

人間のような反応をしめす人形を作る夫婦。二人は実の子を亡くしていた。人間のような人形を求め、AIプログラミングする妻、彼女を助ける夫。失った子と人間のような人形、二人の愛と狂気。

 

感想

読むのに一番時間がかかった話。ぼーっと読んでると時間軸がわからなくなってた。最後の人形のセリフが空虚で怖い。

 

文字占い師

あらすじ

台湾に引っ越してきたアメリカ人のリリーは、ある老人とその孫と出会う。その老人は文字占い師であり、文字によってその意味を探り、さまざまな事を魔法のように占う事ができるという。中国語、英語と様々な言葉を分解し、付け足し、言葉の力を学ぶリリーだったが…

感想

最後の話だったからか、読み終わった時の無常感というかなんとも言えない感がすごかった。見事に現実の出来事をリンクし、漢字の持つ意味を上手く使っていると思う。日本人だからこそよくわかるというのもある。

 

おわりに

最初の紙の動物園から見事に引き込まれた。ずっと読みたかったのもあって感無量だったけど、時間の都合で1日1話ぐらいのペースで読んだためか、この感想を書いているのは読んでから随分たってから。残念な記憶力の都合上、話によって印象の強弱が出たと思う。今後はすぐに読書メモをとるか、感想はすぐ書くようにしたいところ。

短編集は2巻というか単行本版からの別収録作品群があるらしいのでそのうちそちらも読んでみたいです。長編作品もすごい気になっているけども中々図書館では見当たらないので購入かなぁ。

 

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