島のケルトという幻想

無知なもので今まで全く知らなかったのですが、島のケルトって「ケルト」というカテゴリーにするには怪しい分類なのですね。別の文化がケルトと名乗っていた、名乗ってきたものらしいです。個人的に結構な衝撃です。

 

下記サイト様が詳しく解説してくれています。 

(ざっくり)前提として

一般的に「ケルト」というのは大陸のケルトと島のケルトの2種類に分けられると考えられていて、カエサルが書いたガリア戦記に登場するような、もともとヨーロッパ大陸に住むケルト人・ケルト文化の事を大陸のケルトと呼び、侵略やら戦争やらで大陸からブリテン島やアイルランド島に追いやられ、そこで大陸とは違う独自の文化・神話を再形成していったのが島のケルト。

と、されてきた。

 

けど違うらしいよ

しかし近年の研究では、大陸のケルト人がブリテン島・アイルランド島に渡って島のケルト人となったわけではないと証明されつつあるらしい。

大陸のケルトと島のケルトは直接的には無関係で、島のケルトと今まで我々が呼んできたものは、中世以降にそこに住んでいた人達がアイデンティティの確立の為に、「我々は“あの”ケルトの民の末裔であり、ケルトを受け継ぐ者である」と自称し、島にある文化や遺跡諸々をケルトに関するものを「島のケルト」という事にして文化キャンペーンを行ってきた。

その結果、いまのような大陸のケルトと島のケルトという、2つの似てるようで全然違う文化を同じケルトとして扱ってしまう事になり、本当はケルトでもなんでもない島のケルト(便宜上こう呼ぶ)を、ケルトと呼ぶことになってしまっている、と。

 

ケルトの大英雄なんていなかった

ケルト神話でいくと、アトラスのゲームとかスマホゲーとかで最近は色々なところでよく見かけるケルトの大英雄クー・フーリンやケルトのフィアナ騎士団長フィン・マックール。彼らの説明書きや出典によく書かれていた「ケルト神話」の文字。これが、いやいや君たちケルト神話じゃないよね?という事みたい。

ケルト神話は特に、物語としてちゃんと残っているのが島のケルトの方ということもあって、日本でケルト神話といえば島のケルトの方を指すぐらいになっていたので、いきなりケルト神話じゃないです違う何かですとなると影響は大きそう。

ただ、別に肩書・看板としての『ケルト』が間違いだったというだけで、今まで島のケルトとされてきた内容自体には問題はないわけで。タイトルを「アイルランド神話」に書き換えればなんら問題なし(実際多くの文献でケルト神話ではなくアイルランド神話と書かれてる)。けど今まで掲げてきた大きくて有名な看板が実は違うんじゃないのというのは衝撃がでかいなーという話。

 

言われてみれば確かに

確かに大陸のケルト神話を読んだり調べたりしていても、島のケルトと似てるところはほとんどなかったりするので、おやーっと思ったことは数知れず。例えばエポナ神に相当する島のケルトの神ってどれなんだろっていつも思ってたり。まぁケルトの神々も多神教なのでいっぱいいるし、無理やりギリシャ神話形式のように当てはめるものではないかと思っていましたが。

 

でもやっぱり複雑

大学の卒論には島のケルトの方のケルト神話に関する事をテーマに選んだし、アイルランドにワーホリに行ったのも島のケルト神話や文化に魅力に惹かれてというのが1番の理由だったので、あくまで「ケルト」という看板、くくりだけの問題とはわかっているものの、今までケルト好きなんですよと言ってきたのは何だったのか感が凄いあって複雑です。

 

家の本棚のケルト関連(の一部)。ケルト関連本の8割がタイトル修正事案?という事に。

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ケルト音楽も駄目よね。ケルティック云々も駄目よね

家にある本もタイトルから変わるやつもあるだろうし、ケルトってニッチなジャンルなんだろうけど影響ってどれぐらいかなぁと思って考えてみたら、結構「ケルト」って言葉を使っている物とか事ってあるような。ケルト十字架とかケルト音楽とか。セルティックもそう。アイルランド出身歌手の歌や音楽をとりあえずケルトミュージックと言ってたのもダメか。ケルティックウーマン・・・!?

これから出るケルト関係の書籍にも注目。どういう説をとってるかも購入ポイントになりそう。最近良く見る(創作向けの為の?)ファンタジー関連本もどうなることやら。結構ケルト云々って見かけたような。ケルト神話がファンタジーに与えた影響も大きいし、次からは気にして読みたい。

 

アイリッシュのアイデンティティはボロボロ

思い返してみると、アイルランドに住んでた時、本屋にはケルト関連はコーナーとして絶対あったし、古本屋にも山ほどケルト関連本があって「宝の山!!」って言いながら買い漁ってたんですよね。それぐらいケルトという言葉はアイルランドで住んでいる中では普通だった。

ホームステイ先の家族とも、民族のルーツの話をしていた時にケルトの話題になった記憶もあって、「ケルトって知ってる?私たちにはケルトの血が流れているのよ。」というような内容だったと思う。彼女達の思い、重み、言葉が無に(はならないけども心情的に複雑な気分に)なる…。

アイルランドには土着の文化があって歴史があって物語があるけども、君たちはケルトじゃなかったよ。君たちの先祖が、ケルトという言葉を使うと箔がつくからケルトという看板を拝借してたんだよというのはアイリッシュにとってどう思う事なんだろう。気にしない人は気にしないだろうけども、気にする人も多いデリケートな問題な気がする。今度アイリッシュの友人に聞いてみようかなとも思うけどもちょっと怖くて聞けない。まぁ実際は前々から知ってそうだけど。「ついに気づいてしまったか・・・(って言いそう)」

 

最近ケルトという言葉が通じてきて嬉しくなってきてたのに

いやね、最近リアルでFateGOやってる若い知人に、「昔ケルト神話勉強してて~」って言ったら『あ、クー・フーリンとかスカサハですよね!知ってます!ケルト神話おもしろそうですよね!』って元気よく返ってきたわけで。スマホゲーからでもこうやって広まるのはホント良いことだよなぁとシミジミ思ってたところなんですよ。そうやって知名度が高まってきたかと思ってからのコレ。うーん悲しい。話のネタにはなるんですけどね。

  

関連リンク

◇解説サイト様


論文

アイルランド人の起源をめぐる諸研究と「ケルト」問題

http://www.oita-ct.ac.jp/library/public/kiyo-51_pdf/No51_kiyo_1.pdf

 

興亡の世界史 ケルトの水脈 (講談社学術文庫)

興亡の世界史 ケルトの水脈 (講談社学術文庫)

 
ケルトの神話―女神と英雄と妖精と (ちくま文庫)

ケルトの神話―女神と英雄と妖精と (ちくま文庫)

 
Port日記・雑記島のケルトという幻想 無知なもので今まで全く知らなかったのですが、島のケルトって「ケルト」というカテゴリーにするには怪しい分類なのですね。別の文化がケルトと名乗っていた、名乗ってきたものらしいです。個人的に結構な衝撃です。   下記サイト様が詳しく解説してくれています。  (ざっくり)前提として 一般的に「ケルト」というのは大陸のケルトと島のケルトの2種類に分けられると考えられていて、カエサルが書いたガリア戦記に登場するような、もともとヨーロッパ大陸に住むケルト人・ケルト文化の事を大陸のケルトと呼び、侵略やら戦争やらで大陸からブリテン島やアイルランド島に追いやられ、そこで大陸とは違う独自の文化・神話を再形成していったのが島のケルト。 と、されてきた。   けど違うらしいよ しかし近年の研究では、大陸のケルト人がブリテン島・アイルランド島に渡って島のケルト人となったわけではないと証明されつつあるらしい。 大陸のケルトと島のケルトは直接的には無関係で、島のケルトと今まで我々が呼んできたものは、中世以降にそこに住んでいた人達がアイデンティティの確立の為に、「我々は“あの”ケルトの民の末裔であり、ケルトを受け継ぐ者である」と自称し、島にある文化や遺跡諸々をケルトに関するものを「島のケルト」という事にして文化キャンペーンを行ってきた。 その結果、いまのような大陸のケルトと島のケルトという、2つの似てるようで全然違う文化を同じケルトとして扱ってしまう事になり、本当はケルトでもなんでもない島のケルト(便宜上こう呼ぶ)を、ケルトと呼ぶことになってしまっている、と。   ケルトの大英雄なんていなかった ケルト神話でいくと、アトラスのゲームとかスマホゲーとかで最近は色々なところでよく見かけるケルトの大英雄クー・フーリンやケルトのフィアナ騎士団長フィン・マックール。彼らの説明書きや出典によく書かれていた「ケルト神話」の文字。これが、いやいや君たちケルト神話じゃないよね?という事みたい。 ケルト神話は特に、物語としてちゃんと残っているのが島のケルトの方ということもあって、日本でケルト神話といえば島のケルトの方を指すぐらいになっていたので、いきなりケルト神話じゃないです違う何かですとなると影響は大きそう。 ただ、別に肩書・看板としての『ケルト』が間違いだったというだけで、今まで島のケルトとされてきた内容自体には問題はないわけで。タイトルを「アイルランド神話」に書き換えればなんら問題なし(実際多くの文献でケルト神話ではなくアイルランド神話と書かれてる)。けど今まで掲げてきた大きくて有名な看板が実は違うんじゃないのというのは衝撃がでかいなーという話。   言われてみれば確かに 確かに大陸のケルト神話を読んだり調べたりしていても、島のケルトと似てるところはほとんどなかったりするので、おやーっと思ったことは数知れず。例えばエポナ神に相当する島のケルトの神ってどれなんだろっていつも思ってたり。まぁケルトの神々も多神教なのでいっぱいいるし、無理やりギリシャ神話形式のように当てはめるものではないかと思っていましたが。   でもやっぱり複雑 大学の卒論には島のケルトの方のケルト神話に関する事をテーマに選んだし、アイルランドにワーホリに行ったのも島のケルト神話や文化に魅力に惹かれてというのが1番の理由だったので、あくまで「ケルト」という看板、くくりだけの問題とはわかっているものの、今までケルト好きなんですよと言ってきたのは何だったのか感が凄いあって複雑です。   家の本棚のケルト関連(の一部)。ケルト関連本の8割がタイトル修正事案?という事に。     ケルト音楽も駄目よね。ケルティック云々も駄目よね 家にある本もタイトルから変わるやつもあるだろうし、ケルトってニッチなジャンルなんだろうけど影響ってどれぐらいかなぁと思って考えてみたら、結構「ケルト」って言葉を使っている物とか事ってあるような。ケルト十字架とかケルト音楽とか。セルティックもそう。アイルランド出身歌手の歌や音楽をとりあえずケルトミュージックと言ってたのもダメか。ケルティックウーマン・・・!? これから出るケルト関係の書籍にも注目。どういう説をとってるかも購入ポイントになりそう。最近良く見る(創作向けの為の?)ファンタジー関連本もどうなることやら。結構ケルト云々って見かけたような。ケルト神話がファンタジーに与えた影響も大きいし、次からは気にして読みたい。   アイリッシュのアイデンティティはボロボロ 思い返してみると、アイルランドに住んでた時、本屋にはケルト関連はコーナーとして絶対あったし、古本屋にも山ほどケルト関連本があって「宝の山!!」って言いながら買い漁ってたんですよね。それぐらいケルトという言葉はアイルランドで住んでいる中では普通だった。 ホームステイ先の家族とも、民族のルーツの話をしていた時にケルトの話題になった記憶もあって、「ケルトって知ってる?私たちにはケルトの血が流れているのよ。」というような内容だったと思う。彼女達の思い、重み、言葉が無に(はならないけども心情的に複雑な気分に)なる…。 アイルランドには土着の文化があって歴史があって物語があるけども、君たちはケルトじゃなかったよ。君たちの先祖が、ケルトという言葉を使うと箔がつくからケルトという看板を拝借してたんだよというのはアイリッシュにとってどう思う事なんだろう。気にしない人は気にしないだろうけども、気にする人も多いデリケートな問題な気がする。今度アイリッシュの友人に聞いてみようかなとも思うけどもちょっと怖くて聞けない。まぁ実際は前々から知ってそうだけど。「ついに気づいてしまったか・・・(って言いそう)」   最近ケルトという言葉が通じてきて嬉しくなってきてたのに いやね、最近リアルでFateGOやってる若い知人に、「昔ケルト神話勉強してて~」って言ったら『あ、クー・フーリンとかスカサハですよね!知ってます!ケルト神話おもしろそうですよね!』って元気よく返ってきたわけで。スマホゲーからでもこうやって広まるのはホント良いことだよなぁとシミジミ思ってたところなんですよ。そうやって知名度が高まってきたかと思ってからのコレ。うーん悲しい。話のネタにはなるんですけどね。    関連リンク ◇解説サイト様 ◇論文 アイルランド人の起源をめぐる諸研究と「ケルト」問題 http://www.oita-ct.ac.jp/library/public/kiyo-51_pdf/No51_kiyo_1.pdf   興亡の世界史 ケルトの水脈 (講談社学術文庫) 作者: 原聖 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/12/23 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る   ケルトの神話―女神と英雄と妖精と (ちくま文庫) 作者: 井村君江 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1990/03/27 メディア: 文庫 購入: 11人 クリック: 31回 この商品を含むブログ (17件) を見る  好きなものを好きな時に好きなように